神戸松蔭女子学院大学の竹中康之先生、本学の升井洋至先生との共同研究がBiosci. Biotechnol. Biochem. (2010) 74, 2475-2479に掲載されました。
本論文は、エゴマ油を搾取した際に生じる廃棄物からタンパク質を抽出し、抽出タンパク質をゲル化に利用できることを示した。脱脂エゴマ種子の約40%がタンパク質であり、その84%がグロブリンである。エゴマタンパク質にはリジンを除く必須アミノ酸がバランスよく含まれていた。主たるグロブリンの分子量は340 kDaで、3つのサブユニット(54、57、59 kDa)からなる六量体であることが分かった。さらに、サブユニットは3つの酸性サブユニットと4つの塩基性サブユニットからなり、その構造形成にはジスルフィド結合が関与していることが示唆された。このサブユニット構造はゴマα-グロブリンのサブユニット構造と同じ構成である。エゴマ(シソ科)はゴマ(ゴマ科)と名前が似ており、同属の種子であると思われがちであるが、別属である。それにも関わらず、同じようなサブユニット構造をしていることは生物学的にも食品学的にも興味深いところである(*)。今回はエゴマタンパク質の加工特性の特徴として、ゴマα-グロブリンのゲルと比較して、エゴマグロブリンから調製されたゲルはゲル強度が同様であるにも関わらず、高い保水性を示すことが明らかとなった。
(*)エゴマは荏胡麻と表される。「荏」は種子を柔らかく包み込んだ植物という意味であり、その種子の特徴をよく表している。形はゴマとよく似ており、油を「得る」ことからエゴマと言われたとされているが、形のみならず含まれているタンパク質の構成も似ているということは、食品加工において示す特性も似たような性質を示すであろう。その昔、「エゴマ」に「エゴマ」と名付けた人は形のみならず、加工特性も似ていることを知っていたのかもしれない。